レモンのお酒といえば、最近ではすっかり定番となった「レモンサワー」を思い浮かべる人も多いはず。でも、世の中にはレモンを使ったおいしいお酒はまだまだあります! 今回は銀座でBARを営み、数々のカクテルの技能大会で優勝経験のある「BAR ガスライト EVE」のバーテンダー 高橋直美さんを訪ねて、レモンカクテルの歴史や雑学についてお話を聞きました。自宅で作れる、ちょっと贅沢なレモンカクテルのレシピも必見です♪

レモンカクテルって、どんな種類があるのでしょうか?

最近ではレモンサワーが人気ですが、他にもレモンのお酒ってありますよね?
「もちろんです。イタリアで生まれたレモンのリキュール、リモンチェロは聞いたことがありますか? レモンの果皮をホワイトスピリッツに漬け込み、そのあと砂糖水を加えて作られた甘酸っぱいレモンを使ったお酒の代表格です。あとは、カクテルのレシピにレモン果汁や果皮を使うことが多いですね」

レモンを使ったカクテルはどんなものがあるのでしょうか?
「有名なのは『ジンリッキー』、『ジントニック』でしょうか。どちらもライムを使うイメージが強いかもしれませんが、お店によってはレモンを使います。ジンとベルモットを使う『マティーニ』や、ブランデーをジンジャエールで割った『ホーセズ・ネック』というカクテルのように、ピール(果皮)しか使わないカクテルもあります。
あとは、口の中で作る『ニコラシカ』というカクテル。ショットグラスにブランデーを注ぎ、砂糖が乗ったレモンスライスで蓋をします。まず、レモンスライスと砂糖を口の中でそしゃくし、そこにブランデーを流し込みます。レモンは皮ごと食べてしまいます。このように、レモンはどんなお酒とも相性がいいので、ほとんどのカクテルでレモンが使われています。レモンが加わるだけで、フレッシュさが増し、味が引き締まるので、レモン無くしてカクテルは作れないですね」

いろんなカクテルがあるんですね! でも、BARに行ったら名前を忘れてしまって、上手にオーダーできるか不安です。
「まずは、アルコール度数の好みを聞かせてください。お酒が弱いとお伝えいただければ、お好みに合わせてお作りします。あとは、甘い系/さっぱり系、どちらが飲みたいのか。シュワっとしたものがお好みなら、そういうリクエストもありがたいですね。お酒の名前や種類がわからなくても、『お酒は強くないのですが、レモンを使ったお酒で、さっぱりしたもの』のように、飲みたいお酒のイメージをお聞かせいただければ、会話をしながらバーテンダーがイメージにあったカクテルをお作りするので、あとはお任せください!」

お酒の話題に! レモンカクテルの雑学、豆知識

そもそも日本ではレモンのお酒っていつ頃から親しまれていたのですか?
「私も気になって調べてみたのですが、当店には日本で一番古いとされるカクテルブックにヒントがありました。1928(大正13)年に秋山徳蔵さんという、皇室の料理長を務めていた方が書いた本です。西洋の食文化を日本に取り入れた人と言われています」

「この本には西洋から伝わってきたカクテルのレシピが綴られています。今では聞いたことのないカクテルがあったり、逆に有名なカクテルが書かれていなかったり、カクテル文化のはじまりに書かれた興味深い本です。読み進めると『レモネード』が出てきます。それはただのレモネードではなく『エッグ・レモネード』、『オルジェート・レモネード』、『ポート・ワイン・レモネード』など、レモネードだけでも数種類のカクテルレシピが書かれています。いつから日本で親しまれているかまではわかりませんが、少なくても大正時代にはレモネードは存在し、お酒を加えてカクテルとして嗜まれていたことがわかります」

「エッグ・レモネード」は、もちろん卵を使ったレモネードということですよね……? 味が想像できないです……。
「そうですよね(笑)。この本のレシピではお酒を加えず、ソーダで割っていますが、卵がレモンの酸味をまろやかにして飲みやすくしてくれるのでしょう。最近では卵を使ったカクテルは珍しいですが、ジンとレモン果汁をソーダで割る『ジンフィズ』という定番のカクテルに卵黄を加えた『ゴールデンフィズ』や、卵白を加えた『シルバーフィズ』は今でもあります。どちらもマイルドな飲み口のカクテルです」

昔からレモンカクテルが親しまれていたということは、当然今もですよね。お店ではだいたい1日に何個ぐらいレモンを使うのですか?
「当店はカクテルをオーダーするお客さまが多いので、レモンは1日20個以上使います。開店前に絞ってジュースにしておいたり、スライスレモンとくし切りレモンを用意したり、果皮を同じ薄さ、大きさになるように切ってケースにしまっておきます。お寿司屋さんでいう“仕込み”ですね。これだけ用意していても足りなくなることも多々あります」

ひと手間が光る、プロのレモンテクニック

バーテンダーならではのレモンの使い方はありますか?
「レモンの果皮でお酒に香りづけをして、印象をガラリと変えるのはバーテンダーならではのテクニックかもしれません。カクテル全体がグレードアップするんですよ。
レモンの皮をりんごの皮むきのようにむいて、ロンググラスに入れる“レモンスパイラル”という果皮のむき方があります。今でこそスルスルとむいていますが、レモン1個分を綺麗にむけるようになるまで何十回、何百回と練習しました。ご家庭では短冊形の果皮を作るのがいいでしょう。レモンの両端を切り落としてから、縦に2〜3cm幅でむくと失敗が少なくできますよ。食品用ラップフィルムで包めば2〜3日持ちます。水に浮かべてもいいですし、缶チューハイや缶ビールに入れるだけでちょっと特別な一杯になりますよ」

グラスの縁に引っ掛けるのですね。薄さも均一で美しいです……!
「白いワタの部分が多いと苦味が強くなってしまいます。レモンスパイラルはレモンの香りを存分に感じていただけますし、だんだんとお酒に香りが移っていく過程も一緒に楽しめます」

さすがバーテンダーさんが作るレモンカクテル。美味しさだけでなく、見た目、そして時間の経過まで楽しめるなんて、BARならではのおもてなしが1杯にギュッと詰まっていますね。家でもおいしいレモンカクテルを飲みたいのですが、何かレシピを教えていただけないでしょうか?

家でも贅沢な気分になれるレモンカクテルレシピ♪

「家でも楽しめるレシピですね! では、『BAR ガスライト』の1989年の創業当時から代々引き継がれてきた『シトロンスペシャル』をお教えしましょう。レモン果汁、ピール、リモンチェッロのトリプルでレモンを入れた、レモンの清涼感を最大限に生かしたカクテルです。レモンのスッキリとした爽やかさが楽しめるお酒で、常連さんはレモンサワー感覚で最初の一杯として楽しまれています。ジンは柑橘類との相性がいいお酒です。レモンを絞ってソーダやトニックウォーターで割るだけでおいしいお酒が気軽に楽しめるので、ご家庭に置いておくお酒としてもオススメです」

シトロンスペシャル

【材料】
ジン…20ml
リモンチェッロ…20ml
レモン果汁…10ml
ソーダ…適量
氷…適量

【作り方】
【1】グラスに氷を入れ、ジン、リモンチェッロ、レモン果汁を注ぐ。
【2】グラスの縁に沿わすように、ゆっくりとソーダを注ぐ。
【3】マドラーを底まで入れ、氷を持ち上げるように静かに混ぜる。

口を近づけるとシュワシュワと跳ねるソーダとともに、レモンの香りがふわっと漂ってきます。一口飲むと、目がパッチリするほどレモンの甘く爽やかな酸味! 一日の疲れが吹き飛ぶような、最初の一杯にふさわしい、レモンを強く感じられるカクテルです。

「ご家庭で作るときは、難しく考えずに作ってくださいね。先ほどのレモンスパイラルを使いましたが、ご家庭では小さめに切ったピールを軽くひねってから浮かべるのがおすすめです。ひねることで表皮の油が出てきて、カクテルにフレッシュな香りを添えてくれます。強めにひねると苦味が出てしまうので、果実感や爽やかさを楽しむためにも軽く、でお願いします」

「続いて、2層に分かれた見た目も華やかな『アメリカンレモネード』のレシピをお教えしましょう。下はレモネード、上は赤ワインです。レモネードのシロップに重さがあるので、赤ワインが混ざらずに浮いているのです。混ぜてから飲んでもいいですし、まずは赤ワインを楽しんで、途中で混ぜながら飲むのもいいですよ。食前のカクテルとして楽しまれているBARではポピュラーなカクテルです。低アルコールなので、強いお酒が飲めない方にも好まれるカクテルです」

アメリカンレモネード

【材料】
レモネード
・レモン果汁…20ml
・シュガーシロップ…10ml
・水…60ml
赤ワイン…適量
氷…適量

【作り方】
【1】グラスに氷を入れる。
【2】レモン果汁とシロップをグラスの中で混ぜ合わせる。水を少量注ぎ、グラスの半分ぐらいの量になるよう調整する。(甘さや酸味が足りない場合は、レモン果汁とシロップを足して調整してください)
【3】グラスの縁に沿って、ゆっくりと赤ワインを注ぎ入れる。
【4】グラスの縁にレモンスライスを飾る。

まるでレモンの香りがするぶどうジュースのような飲み口で、お酒だということを忘れてしまいそう……。ジュースのような甘さはあるものの、レモン果汁がキリッとした酸味を残してくれるので、後味はさっぱりとしています。

「上手く2層に分かれないときは、シュガーシロップを足してみてください。もし、シュガーシロップが手に入らない場合は、はちみつやオリゴ糖などで代用できます。薄すぎず、濃すぎずの目安はグラスによって変わってしまうので、試しながらコツを掴んでいってくださいね。赤ワインはご自宅で飲まれるお好きなワインでいいですよ。冷やした方がおいしく召し上がれると思います」

自家製レモンシロップでも応用できます。作り方はこちら♪

おわりに

レモンカクテルは100年も前にはすでに親しまれていたなんて驚きですね。レモンカクテルの歴史やBARならではのレモンの使い方を知って飲むレモンカクテルは、格別なものになるはずです。BARだから味わえるレモンカクテルの味、自宅で作るBARのようなおいしいレモンカクテル、どちらも素敵な夜になること間違いなしです。レモンとお酒のおいしさに酔いしれてください♪

取材ご協力

BAR ガスライト EVEの高橋直美さん

BAR ガスライト EVEで店長を務める。「第39回全国バーテンダー技能競技大会」総合優勝(2012年)、「ワールドカクテルチャンピオンシップ」チェコプラハ大会出場 ビフォアディナーカクテル部門 優勝(2013年)。日本人女性バーテンダー初の世界チャンピオンとなる。「自宅にも必ずレモンを置いています。お酒や料理に使うのですが、レモンがないと寂しいですね。今までいろんなカクテルコンペディションに参加してきましたが、どんなレシピでもレモンがないと味が締まらない。これからもレモンとともに、多くの方に愛されるようなお酒を作っていきたいです」

BAR ガスライト EVE

住所/東京都中央区銀座8-4-24 銀座藤井ビル3F
電話番号/03-6274-6393
営業時間/月~土・祝日 17:00~26:00
休業日/日曜
HP/http://www.bar-gaslight.com/bar-info

お酒に関する記事です。飲酒は20歳になってから。

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この記事を書いた人

withレモン編集部

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