日本のレモンとどう違う? シチリアのレモン事情

レモンで有名なイタリアのシチリア島では、10月からレモンの収穫シーズンを迎えます。緑色の果実がだんだんと熟して黄色くなって、いよいよ食べごろです。イタリアで出回るレモンのほとんどがシチリア産ということもあり、シチリア人の食卓にレモンは欠かせない存在なのだそう。シチリアでは、どのようにレモンを楽しんでいるのでしょうか。レモン事情をレポートします!

シチリアの魅力を市場で体感♪

魚市場
青空市場

シチリア島は地中海では最も大きな島。ブーツのような形をしたイタリアのつま先から、すぐ近くにあります。地中海の海の幸に恵まれ、他にも温暖な気候や肥沃な大地で育った食材がたくさんあり、豊かな食文化を誇ります。

なかでもシチリア最西端にあるTrapani(トラーパニ)という街は、新鮮な魚がとれるため市場が盛んです。魚を眺めていると、陽気で気さくなシチリア人が「今日は何を作るんだい?」「あっちにおいしそうな魚があったよ!」と教えてくれることも。
魚市場の近くでは、青空市場が開かれ、みずみずしい旬の野菜やくだものが並んでいます。そこで目を引くのが、やはり色鮮やかな「レモン」。形は不揃い、見た目もゴツゴツしていますが、とても香り高いレモンが箱からこぼれ落ちそうなほど山積みになっています。皮をちょっとこすっただけで、爽やかな香りがふわっと広がり、思わず深呼吸したくなるほどです。

シチリアレモンはどこからきたの?

シチリアレモンはどこからきたの?

「シチリアといえばレモン」というイメージが強いですが、なぜレモンの産地となったのでしょうか。
レモンの原産地には諸説ありますが、アラブ人によって中東に広がっていったという説があります。シチリアには9~10世紀に入植してきたアラブ人から伝わり、その後、シチリアを征服したノルマン人によってヨーロッパ全土に広まっていったそう。レモンの木が栽培されてから1000年以上の歴史があり、そのなかでレモンを使ったたくさんの料理やお菓子が生まれていったといわれています。

シチリアの田舎で暮らす人々の家には、「庭」と呼ぶには広大すぎる緑豊かな土地があり、レモンの木を植えている家庭もみられます。そこでは1年を通して花が咲き、実をつけるものが多くあります。10~3月くらいにかけては、皆さんがいつも目にする黄色いレモンが成ります。黄色く熟したイエローレモンは酸味がやわらかいのが特徴。それ以外の季節には、緑色のレモンが成っています。酸味が強く、あまり強く絞りすぎると苦みを感じますが、暑い夏にはその苦みが心地よいのだそうです。

参考:佐藤礼子「シチリアの風~マンマに教わったとっておきレシピ~」
https://www.pokkasapporo-fb.jp/plyuki/column/01.html
https://www.pokkasapporo-fb.jp/plyuki/column/24.html

シチリア人はとにかくレモンの使い方が上手!

シチリア人はとにかくレモンの使い方が上手!

「シチリアでは、レモンは丸ごと余すことなく使いますね。日本とはまた違った文化でおもしろいですよ」と話すのは、神奈川県・厚木市でシチリア料理店を営む横井拓広さん。トスカーナやフィレンツェで料理の修行をしているうちに、シチリアの食文化、土地、人柄に魅了され、すっかりシチリアのとりこに。シチリアの料理店でも修行したのち、厚木でシチリア料理店「トラットリア イル・フィーコディンディア」をオープン。研修で毎年のようにシチリアを訪れ、現地の味や感性をアップデートしているのだそう。

「日本ではレモン果汁を使うことに重きをおいていますが、シチリアでは果汁よりも葉や皮の方に価値を見出しているように思います。特に葉を使うことが多く、シーズンを迎えると手の届く範囲のレモンの葉が全部なくなってしまうほど。エビを葉で包んで蒸したり、鮮魚の上に乗せてグリルすると、蓋を開けた瞬間に爽やかな香りがふわっと広がり、料理を引き立ててくれます。シチリアではレモンの皮の表面をむいて、白い部分を味付けして食べたりしていますね。レモン果汁を使って魚介のマリネやグラニータなどを作りますが、日本よりは果汁を使う頻度は低いかもしれません。しかし、レモンの果実だけでなく、葉まで使うのですから、シチリア人はレモンのプロフェッショナルだなと思います」

シチリアと日本のレモン、何か違いはあるのでしょうか。横井さんいわく「シチリアレモンはエグみがなく、酸味が尖っていない」のが特徴なのだそう。なんと今回は特別に、日本ではなかなか入手できないシチリアレモンを試食させてくださいました。

シチリアレモン

見た目は日本のレモンとの違いはないようです。すると、「皮まで食べてくださいね!」と、横井さん。おそるおそるかじってみると、苦くない! それに、やわらかい! 甘みすら感じられるジューシーな果肉はまるでフルーツのよう。日本の酸っぱいレモンとの明らかな違いを感じました。

驚くwithレモン編集部のスタッフを見て、にっこり笑う横井さん。続いて、皮の表面をむいたところを食べるという「レモンサラダ」を作ってくれました。

レモンサラダ

「シチリアでは表面をむいて切った後に、水の中で揉んで果汁を出し切ってしまいます。残った白いところをぎゅっと絞って、そこに塩やバジルで調味するなど、オリジナルの味付けで食べられています。当店ではレモンのエグみを取り除いてシチリアの味を再現しています。時々、前菜の盛り合わせとして提供していますが、お客さまは白いワタのところまで食べられるのが新鮮なようで、喜んでくださる方が多いですね」

レモンリゾット

最後に出してくださったのは「レモンリゾット」です。シチリアで作っていた時と同じレシピなのだそう。日本ではなじみが薄い料理ですが、シチリアではレストランだけでなく、家庭で食べられる定番メニュー。アツアツのリゾットからは、ふんわりとレモンの香りが立ちのぼります。「レモンといえば、やはり香りです。フレッシュな香りを楽しんでいただきたいので、表皮を厚めに刻み、口の中で噛んだ時に香りが広がるように工夫しています」と、横井さん。とがりのない、まろやかな酸味と、芯の残るお米が合わさり、さっぱりとしながらも後を引く味です。シチリア人に永く愛される理由がわかります。

おわりに

“フルーツ”といっても過言ではないぐらい、甘くまろやかな酸味のシチリアレモン。果実はなかなか日本では入手しづらいですが、皮や果汁は入手できることがあるそう。見つけたら、ぜひ違いを体験してみてください♪ そして、いつかは本場シチリアで歴史あるレモン料理を味わって、もっとレモン好きになってくださいね!

取材ご協力

トラットリア イル・フィーコディンディア

トラットリア イル・フィーコディンディア

住所:神奈川県厚木市旭町1-24-16
電話:046-265-0297
営業時間:11:30~15:00(L.O 14:00)、18:00~23:00(L.O. 21:00)
定休日:月曜日
https://ficodindia.owst.jp/

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